2009年02月03日

ぐり茶とのび茶

ぐり茶といわれるお茶をご存じでしょうか。

あまり聞きなれない名前ですけれども、どこかで聞いたことがある

という方もいらっしゃるかも知れません。

正式な名称は玉緑茶(たまりょくちゃ)といいます。

ああ、それなら知っているという方もいらっしゃるでしょうし、

知らないけど、玉露(ぎょくろ)のお友達??なのかな。

とぐらいにしか分からない方もいるでしょう。

名前の由来はその形からきています。煎茶みたいに真っ直ぐに

伸びていないで、少し曲がって、丸まった形をしています。

玉のように曲がっているから玉緑茶と名付けられたのでしょう。

これには煎茶のように蒸して作る「蒸し製玉緑茶」と釜で炒って作る

「釜炒り製玉緑茶」の2種類ありますが、釜で炒る方は一般的に

「釜炒り茶」と呼ばれることが多く、玉緑茶と言えば蒸し製を指す

ことがほとんどです。

ぐり茶とのび茶
(ぐり茶)

作り方は煎茶とほとんど同じで蒸してから熱風を当てて揉みながら

乾燥させて作ります。最後の仕上げで、煎茶は精揉という工程で、

まっすぐ針のように伸ばして乾燥させますが、玉緑茶は伸ばさずに

自然に丸く乾燥させます。

そのぐりっとなった形から「ぐり茶」と呼ばれます。また煎茶は

伸ばしてつくるから「のび茶」と呼ばれることもあります。

ぐり茶とのび茶
(こちらはのび茶)

さて、この「ぐり茶」の名前の由来を調べてみるとおもしろいことが

分かります。それは大正から昭和初期にかけてのお茶の輸出に

ついてです。日本はロシア(旧ソ連)にお茶をけっこう輸出して

いた時期がありました。

元々ロシアでは中国茶(釜炒り茶)を主に輸入していましたが

革命による混乱で途絶えた期間があり、その時に日本はお茶の

輸出を図ったのです。しかし日本での主流の煎茶では、釜炒りの

中国茶を見慣れたロシア人にはなじみにくかったようです。

そこで、煎茶の形を丸くして、釜炒り茶に似せて作ったのが

(蒸し製)玉緑茶というわけです。このお茶の輸出は順調に続き、

少しずつ輸出量を増やして行き、1935年頃には約4500トンも輸出

するようになりました。それで、この釜炒り茶に模した蒸し茶に

名前を付けようということになり、名称を公募しました。

その結果、昭和7年に「玉緑茶」という名前が決まったのです。

古来からのお茶の歴史と比すると玉緑茶の誕生はとても新しい

ものなのですね。

さて、ソ連への茶の輸出は順調に進んだものの、1940年の

日、独、伊三国同盟によりストンと途絶え、その後起こった

第二次世界大戦によって完全に終わってしまいました。

そんな玉緑茶ですが、九州ではもともと釜炒り茶の生産が

多かったせいもあり、戦後、九州は玉緑茶の主産地になって

いきます。佐賀の嬉野茶、熊本の矢部茶などは特に有名です。

ぐり茶とのび茶
(ご存じ通潤橋で有名な矢部町、現在では合併して山都町です)

ただ、現在では煎茶が8割以上という日本茶の中での玉緑茶の割合は

非常に少なく、全国的に見ればマイナーな種類のお茶ではあります。

ちなみに熊本では年間約1800トン弱の茶生産量がありますが、

内訳はぐり(玉緑茶)とのび(煎茶)が大体半分ずつくらいです。

基本的な作りはほぼ一緒な両者ですが持ち味には微妙な違いが

あると言われています。

一般的にはすっきりさっぱり系の味で二煎目以降も良く出ると

言われるぐり茶。一煎目に味がしっかり出てコクがあると言われる

のび茶。さあ、皆さんはどちらがおいしいとお思いでしょうか。

ぐり茶とのび茶
(のび茶の産地として有名で、生産量日本一なのは静岡県。
しかしまだ生産量の差がある2位の鹿児島県にじわじわと
追いつかれつつあります。
それには関係なく、がんばれ、熊本県!)





ぐり茶とのび茶






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Posted by おちゃいち at 22:56│Comments(0)お茶について
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