2009年01月05日

茶の品種「やぶきた」

現在、私たちが食べたり、飲んだりしている農作物は

ほとんどが品種改良によって私たちの味覚に合うような

ものになっています。

茶の品種「やぶきた」

お茶もまたしかり、多くの品種が生み出されているのです。

そのお茶の品種の中でも一番メジャーな存在は「やぶきた

という品種です。

もともと茶の木は日本に自生していたという説と、中国から

伝来したとの2説がありました。

現在はDNA鑑定などから中国伝来説が主流です。

そのような、はるか昔に日本に来て、半野生の状態で自生していた

茶の木をヤマチャあるいはザイライ(在来)と呼んでいました。

その茶を、うまみがあり収量も多く採れるように品種改良する上で

大きな功績を残したのが杉山彦三郎(1857~1941)という人でした。

この杉山彦三郎が作った代表的な品種が「やぶきた」なのです。

静岡出身、父は漢方医で、家業は弟が継ぎ、自身は山を開拓して

茶園を造成し、はたから見ると「狂った」ように茶の品種改良に

取り組みました。

茶の品種「やぶきた」
*注1

杉山は「やえほ」「こやにし」「ろくろう」などいくつかの

品種を生み出しました。その中で、明治の終わり頃生み出した

もっとも優れた品種が「やぶきた」だったのです。

名前の由来は敷地の藪の北側で育ったから、と言われています。

今、日本中の茶園の約77%がやぶきたになっています。

それほど圧倒的に力のある品種なのです。

しかし今、多様な品種が次々に生まれ、脱やぶきたの動きが

進んでいます。


やぶきたが生産において圧倒的なシェアーを占めることの弊害も

クローズアップされつつあるからです。

まず、味、香りが画一化してしまったこと。収穫期が一度に来る

ことで製造上の負担がかかる点、そして、やぶきた自体の老齢化の

問題などです。

現在、茶の品種の多くは農林登録制になっており、登録品種は

50種を超えると言われています。

個性的な品種が増える中で、いまだに大きな存在感を示す品種

やぶきた

この品種をどう超えていくかが、これからの茶の多様化と個性化への

目標となります。


茶の品種「やぶきた」

注1、「茶のすべて」窪川雄介編より







茶の品種「やぶきた」




Posted by おちゃいち at 22:35│Comments(2)茶の品種
この記事へのコメント
「やぶきた」の負の側面

昭和30年代からの急増する緑茶の国内消費に対応するかたちで「やぶきた」が普及し始めました。その背景には、茶品評会が「やぶきた」でなければ入賞できないと言われるようになったことがあり、『やぶきた品評会』と言われるまでになったとか・・・。
あまりに「やぶきた」に偏重したことから、生産現場では適期の収穫が困難で、施設への過剰投資を招くことになりました。また品質が画一化して産地の特徴を出すのが難しく、嗜好品でありながら多様化が図りにくくなっています。
「やぶきた」に偏った品種構成が品質の画一化をもたらし、茶の潜在的な可能性を狭め、多様化する私たちの嗜好に対応できなくなっているのではないでしょうか。
Posted by お茶の虫 at 2009年02月25日 21:30
お茶の虫様

仰るとおりですね。
しかし、これからは品種の茶も少しずつ増えていくことだと思います。
Posted by おちゃいち at 2009年02月26日 08:44
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